金のシマリは人間のシマリ
昔から「一銭を笑う者は一銭に泣く」と言われています。
お金を軽く扱う人は、将来必ずそのしっぺ返しを受ける。
つまりお金というものは、いわば正宗の刀のようなもの。
使いようによっては非常な威力を発するものですが、それだけにまたその取り扱いは、非常に注意を要するのです。
今さら皆さんに申し上げるまでもないことですが、いくら注意してもし過ぎるということのないものだと思います。
お金というものは、いわばお水のようなもので、バケツの底が大切なように、バケツの大きい小さいよりも、底に穴の有る無しのほうが最後を決するものです。
お金に関する根本鉄則は、「入るを計って出ずるを制する」の一言に尽きます。
そして、わたしたちはたとえお金持ちにはなれなくても、せめて金に困らぬ人間にはなりたいものです。
そういう点から考えると、金のシマリの悪い子は、親にとっても困りもので先行きが心配になります。
そこでこの点についてはどうしても、二宮尊徳翁の言われたように、分限分度を守る人間にしなくてはなりません。
では、そのために母親としてはいったいわが子をどんなに育てたら良いでしょうか。
それについて真っ先に大切なことは「お金のシマリは人間のシマリ」だということです。
そしてこれをどのようにしてわが子に躾けるかが、母親にとっては根本問題の一つといってよいでしょう。
さてそれには、まず第一に母親自身が家計簿をつける人になってほしいということです。
それと申すのも、いやしくも一家の家計をあずかる主婦として、家計簿をつけることは絶対の義務と申してよいからです。
同時にこれがわが子に経済の躾をする第一の根本条件といってよいわけです。
ではそのためにわが子に対していったいどういう躾が大事かと申しますと、第一に履物を脱いだら必ずそろえ、席を立ったら必ずイスを入れる子に躾けるということです。
それというのも、履物を揃えるということは、経済のシマリとも大いに関係のあることだからです。
いまここに二人の姉妹がいるとして、どちらが将来金で困るかどうか、またその程度加減をいったい何によって判断し、予測出来るかと申すと、それは結局その「履物の揃え方」いかんによってわかるのです。
それほどまでに履物のシマリというものは、その人の人間としてのシマリを表すものなのです。
そしてその人の人間としてのシマリは、まず経済としての、すなわち金のシマリとなって表れるのです。
ですから、どうぞ履物の躾は、単に見苦しいからというだけでなくて、人間のシマリからお金のシマリにもつながるものとして、幼い二、三歳の頃から仕込みたい大事な躾の一つなのです。
では次に大事なことといえば、それはなるべく外食の癖をつけないようにすることです。
前にも言いましたが、私は女子大生にも、なるべく弁当を持ってくるように言っているわけですが、それは学生時代から「女性は生涯、自分一人では極力、ほとんど絶対に外食しない」という習慣を、少女時代から大学時代までに、しっかりと身につけさせるためです。
また娘時代の心がけとしては、自分の現在の小遣いを、将来の家計の縮図と考えて、将来一家の主婦となった際の家計の練習をするのがよいと思います。
そしてそれには、さしあたって、まず小遣い帳を正確につけることが大切です。
経済のことに関しても、女性に厳しいとお思いの方もあるかと存じますが、それもそのはずで、そもそも男のほうは収入面における経済上の責任者であり、これに反して女性は支出面におけるその責任者だからです。
ではこれら両者のうち、いざとなったら、どちらが大切かと申しますと、結局支出面を受け持つ女性のシマリのほうが物をいうわけで、この点のわからぬ程度の人は、まだ現実界というものが真に分かっている人とはいえないでしょう。
また、近頃一家心中の一原因ともなっているサラリーマン金融や信用ローンの申し込みも、主として女性のほうが多いらしいようですが、これ一つをとってみてもお分かりでしょう。
ただ男性というものは、もともと賭け事の好きな人が少なくなりませんから、男の子で注意したいことは、ゲームセンターなどには絶対に近づけないことです。
わたくしがいつも心痛に堪えないのは、夏休みにおける家族旅行などの際、ホテルの設備としてあるゲームセンターに、わが子を存分に遊ばせている母親が少なくないということです。
これは将来わが子を賭け事好きな人間するための種まきをしているようなもので、それを思うとゾッとしませんか?
親御さん方として深く慎んでいただきたいことの一つです。
要するにお金のシマリは、人間のシマリゆえ、子どもへの小遣いの与え方なども、心して十分に注意を払っていただきたいものです。
わが子への小遣いの与え方は、年齢やその家の経済状態から、さらには同級生や隣近所の様子など実に複雑かつ非常にデリケートな問題ですから、一律ということなど到底できません。
ただ、一般的にもいえることは、まずあまり多すぎないように、しかしあまりに少な過ぎないようにということですが、それを基本的にいくらが適当かと判断することこそ、母親にとっては最も大事な、かつ厳しい試練といっていいでしょう。
夫婦共働きで、そのために金をやって手放しに放ったらかすような無茶なやり方をしていて、わが子が非行化しないとしたら、現在の我が国ではむしろ不思議といってよいほどでしょう。
「家庭教育の心得21 母親のための人間学」(森信三著)14より
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この記事を書いている時点で、息子はまだ2歳半にもなっていません。
なので、直接お金のことでどうこう、という話はないですが、靴を揃えることだけはやらせるようにしています。
たまに「イヤ」といって嫌がる事もありますが、それでも靴を揃えるまで根気よく待ちます。
そう、毎日が我慢大会と言ってもいいような、そんな状況です。
自分自身は、小遣い制ではなく、必要な際に親からお金をもらう、というスタイルでした。
そのため、小遣い帳をつけたことはありません。
社会人になりたてのころは収入が本当にギリギリだったので、必然的に会計簿みたいなものを付けていました。
ですが、今は自分では小遣い帳すらつけていませんね。。。
小さい頃からやっていれば習慣化されて苦もなく続けられているんだと思います。
そう思うと、本当に小さい頃の習慣、癖というのは本当に大事なんだなぁと思います。
息子が大きくなって小遣いが必要なときになったらどうするのか。
小遣い制にして、自分で自分の財政管理を勉強させようと思います。
たとえ金額は小さくても、自分で頭を悩ませて財政を考える経験を重ねれば、将来のためにもあると思っています。
それにはまず、自分の小遣い帳からですね・・・。
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