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新たなる人間学を

公開日: : 人間教育, 夫婦

宇宙観 人生観

はじめにちょっと言いましたように「人生二度なし」という人生最深の根本真理は一見わかりきったことで自明のことだと思われがちですが、これを本当に身に体することは実は簡単なことではありません。

それにはその背後に、哲学的宗教観、宗教的哲学観、といったような叡智をもつ必要が出てくるわけだからです。

そういうものを、自分なりに持たないと、せっかく「人生二度なし」という根本真理も、ほんとうに人生を生きる原動力とはなりえません。

 

lifeisonetime

 

ところで、そういう宇宙と人間の関係、また人生に意義について、明らかにしてつきとめることは、人間には許されないことでしょう。

なぜなら、我々は、自分の意志と力によってこの地上に生まれたものではなく、絶大な宇宙生命によって、この地上に生を与えられたわけです。

だから、われわれには、実は人間そのものについてさえ、本当のことは分からないはずです。

ましてや、われわれ人間を初め、一切の天体を生み出し、統一し、運行させて、一瞬といえどもとどまることのない大宇宙の真相を、われわれ人間の限りある知力ではとても分かるはずがないからです。

ところが、古来、西洋において哲学と呼ばれてきた学問は、ソクラテス以来2000年という永い年月を、このような宇宙人生の根本問題を学問的に究明しようとしてきたのです。

またわれわれ東洋においても、宇宙人生の真相に対しては、直観によって、われわれ人間の根底はそのまま大宇宙の根本生命とつながっており、それと直接に連続していると考えてきたのです。

そのため、人びとがそのつもりになって内省内観の努力を怠らなかったら、もちろん人によってそれぞれ趣の相違はあるにしても、全然分からぬということはないと考えてきたのです。

そしてわれわれ東洋の先哲たちは、西洋のように論理的な分析をするのではなくて、内観の立場から宇宙と人生の真相の一端に、身をもって触れようとしてきたのですが、西洋の哲学者たちのように、必ずしもそれを学問的な体系にしようとしなかったのです。

現代の目から見れば、こうした東西の考え方の違いはそれぞれ長所と短所があるので、どちらか一方でなければならないとは、わたしも考えていません。

ただ、われわれ東洋人にとっては、西洋哲学のような鋭利な分析的論理だけではその体質にあわず、いや、むしろ理解することさえ実は簡単ではないと思うのです。

まして、それを生きる原動力とするわけにはいかないと思うのです。

 

人間学の提唱

そこでわたしとしては、いわゆる既成宗教の枠にとらわれず、とはいえいたずらに西洋哲学の難解にも陥らないで、その両者の間を縫ったところのいわゆる宗教的哲学観を提供することこそ、現代において緊急かつ大事なことだと思っています。

ではそれについて何かふさわしい名称をつけるとすると、私の考えでは「新たなる人間学」というのが最も適当なのではないかと思っています。

わたしは、哲学という名称すらしっくりこないために、哲学の代わりに「全一学」という新たな名称を考えるに至っています。

そのため、ここでいう人間学もそういう全一的人間学という意味として使っています。

だからこの人間学には、人生観や世界観が含蓄されており、単に現代の世に対処するための智慧のみを意味するわけではありません。

そして今日、そういう人間学こそ、いわゆる「万人の学」として世間では求められているにもかかわらず、それに応える努力が、これまで学者の側からも、また宗教家の側からも、なされていないように思います。

それというのも結局、学者や宗教家と呼ばれるような人びとが、現代という時代の現実を踏まえて、ほんとうに民衆の悩みというか、その魂の求めに対する洞察がどちらも、切実に行っていないように思います。

そのため、「新たな人間学」の確立が必要だと思っているわけです。

 

神・人間・万有

そこで、そうした立場に立って、わたしの考えを端的にお伝えしようと思いますが、何ぶん紙面に限りがあるので十分な説明はできません。

箇条書き的に列挙しますので、みなさんに噛みしめて味わっていただくことを念じています。

1.われわれ人間は、自分自身の意志と力によってこの地上に生まれてきたのではなくて、結局、大自然というか、絶大無限な宇宙生命によって、この地上にその生を与えられたという他ない。

2.したがってまた、われわれ人間というものは大宇宙意志によって、この世へいわば派遣されたものといえる。

3.われわれ人間ならびに万有は、いったいなぜこの世に生を受けたのか。それはこの地上の繁栄のためであり、さらに全宇宙の栄光のためであろう。

4.何のために私という一個の人間がこの世に派遣されたのか。自分に課せられたこの世の使命を知るのが、ひとりひとりの人間各自にその責任があり、それこそ第一の任務である。

5.この地上へ派遣された自らの使命感の自覚は、人生の二等分線、四十歳前後を越えるころであり、しかもそれは「死」の寸前まで深められねばならぬ。

6.神とはなにか。この大宇宙をこのようにあらしめている宇宙の根源的生命の絶対無限の統一力ともいえる。

7.無限絶大なる神的「力」は、この大宇宙を超越してそれを成立させていると同時に、さらに大宇宙の内部にも遍満存在している。

8.大宇宙は、巨大なる「調和」と「動的統一」という、絶大な宇宙的法則によって支配されている。これが東洋における「易」の真理であり、陰陽の調和循環の原理である。

 

以上は、一応の形而上学的人間学の骨子を羅列したにすぎませんが、今後ともより深く、その真意をおのおのそれぞれに味得領解していただきたいと思います。

やや現実離れした話のようですが、これが人間学の地盤をなすと思うからであります。

 

「森信三先生 父親人間学入門 1」 寺田一清著

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我々人間は生きているのではなく、生かされている。

なぜ生かされているかといえば、それはこの世の中の進化向上、発展のため。

そう考えると、人って決して弱いものではないですよね。

とても崇高で強さを持ってこの世に生を受けていると思えます。

 

それが本来の使命、姿だとしたら、いま我々がかかえる悩みとか恐れとかというのはなんなんでしょうか。

何が悩みや恐れを感じさせているんでしょうか。

心ですかね。

心が、苦しいという感情をつくり、怖いという感情を作ります。

一方で心は、楽しい、嬉しいといった感情を作ります。

そういった感情は世の中の進化向上、発展の結果を味わうことができるのでとても必要ですよね。

 

ではなぜ心には恐れとか、苦しみというものを感じる必要があるのか。

きっと人が生まれでた時に、他の生物、動物から補食されないために、つまり命の危険を感じるために備わっていたんだと思います。

その心の作用がこれまで人類がかかえてきた危機的状況を乗り越える原動力になってきたんではないでしょうか。

 

では現代でもそのような感情は必要なんでしょうか?

先進国では飢餓で死ぬということはさすがにありません。

仕事がなくなっても生きていけます。

それなのに我々の多くは生活のために仕事をすると言っておきながら、そのために苦しみ、煩悶、恐れというものを感じさせられてしまう。

なんだか手段と目的があべこべになっているような気もします。

 

もともも生死の分かれ目を乗り越えるために備わっていた恐怖という感情。

いまや、生死にはあまり関係のないところで恐怖という感情を得ている場合がほとんどだと思います。

この恐怖を乗り越えられれば、森先生のおっしゃる、「人生二度なし」という思いを持って存分に生きていけるような気がします。

森先生がお持ちの理論と実践には、その問いへの回答があるんでしょうか。

あることを期待しつつ本を読み進めたいと思っています。

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