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七 健康管理と立腰

公開日: : 健康, 父親

健康とは

今日のような時代わたしたちは天災・人災のいかんをとわず、いつ何時不慮の事故に遭遇するかもしれず、明日の命さえ保証はされていません。

そこで、われわれとしては、いつ死んでも悔いのないように、いつでもそこに人生の一完態を呈するような生き方が望ましいと思います。

ところで、人間はいつなんどき何事が起こるかわからぬ、という覚悟の必要なことは申すまでもありませんが、しかしせっかく「生」をこの世に享けた以上、お互いに出来るだけ長生きして、最後まで充実した生活を全うしたいものです。

そしてそのためには、お互いにできるだけ用心して、健康に留意する必要があると思います。

それというのも、われわれ人間の生命は、もともと神から与えられたものですから、もし神意にしたがって無理をせず、正しい生活態度を守ったら、九十歳とか百歳とかは別として、だれでも八十歳前後までは生きられるのが本当だろうと思います。

さて、健康への方法について考えるその前に、そもそも「健康」とは一体どういうことかという点を、まず明らかにしておく必要があります。

では「健康」とは一体どういうものかというと、それはわれわれの人間の全身心の調和とバランスが、よくとれている状態だといってもよいでしょう。

というのも、いわゆる体力が強健だということと健康とは、必ずしも同じではないからです。

もっとも身体の強健な人は、概して健康だとは言えるでしょうが、しかし必ずしもそうとは言えません。

学生時代に運動選手だった人が、社会に出てから、とかく病気がちという例が意外に多いということは、みなさんもすでにご承知のとおりです。

この一事によっても身体の強健と健康とが、必ずしも同じだと言えないことがお分かりかと思います。

ではどうしてかと申しますと、一部の運動選手などは、自分の体力を過信して、とかく無理をしやすいからです。

ところが無理をするということは、全身のバランスが破れるということで、結局は健康を損なって病気になります。

同時に反対に、若い頃はそれほど強健でないどころか、中くらいか、時にはそれ以下の人でも、つねに用心して無理をせず、いつも身・心の全体的な調和とバランスを破らないように注意する人は、案外長生きするものです。

いわゆる長寿の人の中には、意外にそういう人が多いようです。

 

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立腰と健康

ところで、この全身的な調和とバランスを保つという点で、根本的な一番大切なことは「立腰」すなわち「腰骨を立てる」ということです。

というのも、脊柱というものは、いわば全身の大黒柱ですから、これを常に真っすぐにしていると、全身の釣り合いがよくとれ、バランス感覚が鋭敏になります。

その大事な脊柱の基盤をなす腰骨を立てることは、身・心の統一・集中・持続力を身につける極秘伝であるのみならず、健康維持の上にも大いに効果のあるわけです。

私は今年で満85歳になりましたが、老け込みが人様より多少遅いらしく、こうして日々山積する仕事を今なおこなせるのは、いつも申すように、15の時から腰骨だけは立て続けてきたお陰であります。

それに9年前に長男を亡くしまして、それ以来、未解放部落に入り、その一隅で独居自炊の生活を続けておりますが、玄米食と一汁もしくは一菜で、きわめて粗食の生活を送っております。

私の健康維持にとっては、この「立腰」「粗食」とが欠くことのできない二大素因ををなしていると思われますが、もう一つ私の常に心がけておりますことは、物事を「おっくうがらぬ」ということであれいます。

何事もおっくうがらずに、立居振舞を俊敏にするように心がけ、必要あれば二階の上り降りを日に幾十回するかわからぬほどであります。

なお序ですが、その他に私が実行している健康法の二・三を、次にご参考までに申しますと、

1.第一は「半身入浴法」です。

これは入浴のさい、乳から上の上半身を、お湯から出しているということです。

その際のお湯の温度は、多少は熱めでもよく、また初めに顔を洗わず、乳から上を濡らさず、じっと下半身を温めるのであります。

そして後では外で全身を洗い、その後の入浴では肩までお湯に全身をつけることは申すまでもありません。

(ただし、なるべく短時間で上がるようにするのです)

この「半身入浴法」は特に下半身をよく温め、全身の血行を整える上で大変効果があります。

 

2.次には「無枕安眠法」です。

これは文字通り夜寝る時、枕を用いないということです。

これを実行しますと、一日の疲労は一夜のうちにスッカリ消えてなくなるのです。

我々人間の頭は、体重の約3分の1ほども重さがありますが、枕をすると、枕の高さに応じて頭の重量の何分の一かが、背骨の第十二骨から第十五骨の辺りにその重みが伝わります。

そして睡眠中ずっとその部分に重みが加わりますので、自然に背中のその部分、これを昔からけんびきと読んでいますが、が凝るわけです。

ところが枕をしなければ、頭の重量は全部地球に吸い取られますから、さすがのけんびきも全然凝らなくなるのであります。

 

3.第三は飯菜別食法です。

これはわかりやす言うと、ご飯とお菜を口の中で一緒にしないように、一口ずつ別々に食べるという食べ方です。

この食べ方を実行すると、どんなに胃の悪い人でも、しだいに胃の患いから救われるのです。

というのも、我々人間ののどは、お菜かご飯か、どちらか一方だけですと、十分に噛まないと、のどの番人が見張りをしていてなかなか通しませんが、ご飯とお菜をいっしょくたに口の中へ入れますと、のどの番人はもはや見張りを止めますから、咀嚼不十分なままでも平気でのどを通るのであり、そしてそれが胃の悪くなる根本原因であります。

以上の3つは、私が多年実行している健康法についてカンタンに述べたわけですが、健康法としてはこれら以外にもいろいろあるわけで、要は、自分の体に合った健康法を突き止めて、生涯それを実行するのが大切だと思います。

 

自己防衛策

ところで今日、ガンによる死亡率が死因の第一位を占めるほど、ガンの脅威を感ずる時世ですが、ガンという病気は一種の総合的な文明病であると考えざるを得ません。

ですからその原因はいろいろと論ぜられるわけで、食品公害もその重要なひとつと数えられると思います。

一時注目の的として騒がれた公害問題も今は鳴りをひそめておりますが、保存食品の中の着色剤・防腐剤、それに工場の廃液による魚類の薬害含有、それに農薬や洗剤の悪影響など、今なお規制の網の目をかいくぐって公害食品がまかり通っている現状ではないでしょうか。

思えばこういう恐るべき時代に、何を食べたら良いかということは、実に重大な問題ですが、私として申したいことは、1.玄米に切り替えること、2.なるべく植物性のタンパク質のものを摂ること、3.できるだけ白砂糖を減らすということです。

このように、今日の時代においては、われわれ各自が、食品に対する自己防衛策を打ち立てて、これに対処するより他ないと言わざるを得ないようです。

なお序ですが、医学者の研究成果として、「味噌汁の常食者は、胃がんに罹りにくい。ただし塩分をやや控えめに」とのことです。

これはもちろん味噌汁を一切食べない方に比較しての、統計上のことですが、味噌汁というものがいかに民族における智慧であるばかりか、日本人の風土と体質に適したこの上ない健康食品であることを、私たちは改めて認識する必要があると思うのです。

なお味噌汁には、ワカメ、豆腐、油揚げは欠かせぬもので、この三品によって、味覚の調和のみか、栄養価のバランスは正に絶妙と申していいでしょう。

 

「森信三先生 父親人間学入門 7」 寺田一清著

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私はもうすぐ35になりますが、明らかにからだが20代の時とは変わっていることを感じています。

というのも20代はいくら食べても身体はなんともなかったのですが、35を目前に控えると様子が変わってきました。

まず、食欲がそんなにわかない、それにに食べ過ぎるとお腹を壊すということが起きてきました。

一度、大変なお腹の壊し方をしたので、それ以来、食べるもの、食べ方というのをこれまでと激変させました。

森先生もおっしゃっていますが、植物性のものをなるべく食べること、また、腹八分で間食はしないこと、そして、よく噛んで食べること、です。

これにより身体が非常に調子が良くなりました。

これまでの食べ方はとにかくなんでもいいから身体に食物を与えてきたわけですが、もう身体はそこまで食物を必要としなくなったんでしょうね。

何を食べるか吟味し、食べ方も胃腸が喜ぶ食べ方で食して行きたいと思っています。

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