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子どもは見てる 知ってる 感じてる

公開日: : 人間教育, 子育て,

こころの察し

ひとかどの教育者のような口調で述べてまいりましたが、実際のところ、学校教育の現場に立ったことはなく、大勢の社員を抱え、社員教育で苦労を重ねた経営者でなく、ただ五人の子を持ち、外孫・内孫あわせて10人の孫を持ち、いささか家庭教育に関心と苦心を重ねてきた程度の人間です。

そうしたなかで、学問と実践の学ともいえる全一学者の森信三先生とご縁をいただき、その道縁から、優れた教育者の東井義雄先生、徳永康起先生を知り、もっぱらこの御三人の先生から学び続けた者なのです。

その三人の師から、なかでも中心核の存在である森信三先生から学んだことを、皆様に少しわかりやすくお伝えしようと努力を重ねてきた者です。

 

ところで、兵庫県出石郡但東町の生んだ不滅の教育者、東井義雄先生の詩に、

こどもは星

どの子も

子どもは 星

みんなそれぞれがそれぞれの光を放って

輝いている

パチパチ まばたきしながら

子どもは自分の光を見てもらいたがっている

光を見てやろう

まばたきにこたえてやろう

とあります。

 

東井義雄先生がよく紹介なされた小学四年生の作文があります。

「おかあちゃん、ほら、つうしんぼぼろてきた」といってわたすと、おかあちゃんはうけとって、だまって見ていられました。

ほめてもらえるかと思ってまっているのに、何もいわれません。

それで「おかあちゃん、はやくなんとかいうて・・・」。

するとおかあちゃんは「たいしたことはない」。

わたしは、ほめてもらえるかと思って走って帰ったのに、がっかりしてしまいました。

yaruki

 

この作文を読んで感じるのは、つい忙しさにかまけて、子どもの気持ちを汲み取ってあげないのと、もっともっとという期待のみが先走って、欠点に眼がいき、美点長所を見逃しがしてしまいがちなのです。

わたくしもずいぶんこうした過ちを重ねてきました。

わたくしが尊敬申し上げる経営コンサルタントの浅野喜起先生のことばに、

「経営コンサルタントというのは、顧問先の会社の欠点を指摘するのが仕事ではなく、その会社の長所を見つけて、それを伸ばしてもらうのが本務なのです。わたくしのモットーは長所を見つけて三重丸です」といつも仰られます。

それを聞くたびに、欠点指摘型の自分を大いに反省するのです。

欠点指摘より長所発見型に切り替えたいといつも思うのですが、ついつい地金が出てしまうのです。

先日送られてきた学級通信の片隅にこういう詩がありました。

 

水のこころ      高田敏子

水は つかめません

水は すくうのです

指をぴったりつけて

そおっと 大切に

水は つかめません

水は つつむのです

二つの手の中に

そおっと大切に

水ののころ も

人のこころ も

なるほど、なるほど。

その通りです。

大変感動して読ませてもらいました。

 

愛情欠乏症

ところでつぎは悲しい実話で、道縁の斎藤一郎先生の記録で読ましてもらったものです。少し長い引用ですがご辛抱ください。忘れられないお話なのです。

あの時のボタン

その頃、私は海辺の小さな中学校の三年生の担任でした。私のクラスには、気になる一人の子がいました。その子のお母さんは、その年の6月の懇談会ではこんな話をされました。

「あの子は遅くなる私を待って、夕食をいつも一緒にしようとするんですよ。私のことを思ってくれているんです」と。

ところが、2ヶ月後の夏のある日、そのお母さんは突然、家を出て、行方がわからなくなってしまった。

彼は、来る日も、来る日も待ち続け、そして、秋のある夜、残っていた母の着物と履物をすべて浜に持ち出し、焼いてしまったのです。

やがて彼の表情から意欲的なものが消え、うつろになったこころを強がりで紛らそうとするのでした。

倉敷読書会の夜、私はこの話をし、森先生に教えを乞いました。

森先生は「母親が存在しているという思いは、子どもの心の一番深いところにあって、その子のすべてを支えているのです。彼はその支えを失ったのです。母親に代わる母性の愛が必要です」とお話くださいました。

わたくしは、学校でこのお言葉を先生方に伝えました。先生方はよくわかってくださいました。

温かい目で、彼の将来のことを考えてくださり、みんなで励ましながら、彼の学力にあった問題なども作成し、教えてもくださいました。

将来のことなど考えもしなかった彼が、県立工業高校への出願を申し出てきたのは、2月初めでギリギリの時でした。

それから三年たったある年の春、彼はその工業高校の卒業証書を手に私に会いに来てくれました。

そして「3年前、保健室の隅で先生につけてもらった学生服のボタンは、今も大事にしまっています」と言ったのです。

この言葉を聞いて、私は涙があふれそうになりながら、森先生のお言葉を思い浮かべることでした。

なんと感動的なお話でしょうか。何べん読んでも、涙なきを得ないのです。

思えば、こうした母なき子、こう父なき子が増えているのではないでしょうか。働く女性が増え、自活力を身につけた現在、離婚事情が年ごとに増え、こうした寂寥感を味わうお子さんが増えていくことは、実に哀しい現実といえます。

子育てを、テレビにあぶけ、便利なオモチャを与え、食事はインスタント料理ですまし、子どもを、塾に追い立て、自分は・・・という風では、まことに心配ものです。

物が豊かに、便利な器具がそなわっても、今日の子どもの多くが、真の意味での愛情欠乏症ではないでしょうか。

秀明大学教授で、日英間を往来している国際的学者として著名なマークス・寿子さんが「とんでもない母親と情けない男の国日本」と題して警告を発しています。

▶︎英国では、子供を育てることを、親も先生も「次の世代を育てる」と言う。次の世代がきちんと育たないと、社会が困るわけです。

▶︎有名校に受験させる場合も、子供のためでなく、自分のためなんですね。自分が子供をこんなにさせたんだと、自分の成果にしたいからなんですね。

▶︎教養とは、知識の積み重ねではなくて、生活のすべてにわたって、自己制御を学ぶことだと、英国人は考えているんです。

▶︎自分の子供を立派な社会人にするために、まず、親がしつけをする義務と責任があるということが、完全に忘れられているようです。

ざっとこんな調子で英国人のあり方をとりあげつつ、日本の現状を第二の敗戦と把握しています。

このままいけば、第三の敗戦になりかねないと憂慮しております。

 

「三つのしつけ」 ー親も子も共に育ちましょうー 第六章(寺田一清著)

 

ーーーーーーーーーーーー

 

子どものしつけは、結局親にかかっているんですよね。

子供が言うことを聞かないのは、親が言うことを聞いてないから。

子供が笑うのは、親が笑うことが多いから。

子供は本当に親の影響を、そのままに受け入れます。

 

だから、親たる人間が親としてふさわしいのか。

それが大切になってきますよね。

おそらく森信三先生から見たら、親としてふさわしい人間は、半分いないのかもしれません。

親としてふさわしい考え方、行動をどうやって身につけるのか。

やっぱりそれは既に人生の先人達が様々な経験、苦労を重ねてきているので、そこから気づくのが一番でしょうね。

学ぶ、というとアタマで理解するだけで行動にはなかなかつながらないので、気づく、というのが大事なんだと思います。

気づいて、親としてふさわしい考え、行動を実行する事が大切ですから。

 

私の家は、両親があまりきちんとあいさつをしない家庭でした。

言葉はかわしますが、目も合わせず、しかも歩きながら、という感じです。

私自身もそれが当たり前になっていました。

しかし、子どもが生まれて、子育てに関していろいろと情報を集めていると、あいさつというのは、人間形成にも大事だし、家庭内の雰囲気、人間関係のためにも大事であるということに気づきました。

それからというもの、34歳なので今さらというところがありますが、家の中ではなるべく目を見てあいさつをするようにしています。

子どもの教育で、自分自身、本当に成長させてもらっているなぁと感じています。

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