時には飢餓感を体感させよ
「物が豊かすぎると、心はかえって衰弱する」と言われていますが、これは宇宙的真理のようです。
近頃、街には食料百科のスーパーがあちこちに出てきて、インスタント食品が氾濫し、冷凍食品が出回って、季節を問わず四季とりどりの食物を口にするようになりましたが、その反面、何か失われてゆくものもあるようです。
物が豊かに容易に手に入るということは誠に結構なことですが、その反面、確かに人間の精神力がだんだん衰弱していくように思われます。
ですから、食べ物の好き・嫌いを言う子どもが増えているようです。
またご飯やお菜を食べ残す子どもが増えているようです。
これは子どもだけに限らず、大人の親たちにも増えているようです。
「食べる」ということは、もともと命あるものの「生命保持」の厳粛な営みであるべきです。
その原始本能的なバロメーターは、空腹感ひいては飢餓感に発するものなのです。
ですから、どんなご馳走といえども満腹感の時には、さほど欲しくないというのはそのためです。
しかし、今日、この原始本能というべき食欲ならびに味感覚が、大変損なわれて、その本然さを失いつつあるのではないでしょうか。
その対策の第一として思いますのは、前にも言いましたが、主食を白米から玄米に切り替えるということです。
わが子を丈夫な子にする秘訣
玄米食は健康のためによいというだけでなく、これは我々日本人に最もふさわしい「食」の原点だからです。
自然にして健全な味覚の回復のためにも、ぜひ玄米食をおすすめしたいのです。
不思議なことに、玄米食を常食にしておりますと、肉も魚も欲しくなくなるものです。
そしてこれまで美味いと言われていたものが、大して欲しくなくなるから不思議です。
その点、経済の面からも一挙両得と言えましょう。
次に第二の対策として、前にも言いましたが、甘いものを取りすぎないようにということです。
わが子を丈夫な子にする秘訣
白砂糖は最近やかましく言われているように、血液酸性化するわけで、これが脳溢血の原因になったり、がん等も有力な原因の一つと言えましょう。
ですから「糖分」はほとんど准毒物として極力抑えるというのが、今日私どもには、食生活の重要な心得なのです。
次に第三の心得として、これは食べ方の問題ですが、よく噛みよく味わうということです。
それにはご飯とおかずを一緒に口にしないように、ということです。
これは飯菜別食法といって、ご飯だけを口にしてよく噛んで喉を通ってからおかずを口にする。
おかずをよく噛み味わってから、これも喉を通ってからご飯を口に入れるというやり方です。
次いでですが、この飯菜別食の完全咀嚼法をやりますと、ひどい胃腸病患者でもいつしか解放されるのですが、それだけにこの食べ方に慣れるには、人によってはなかなか手間がかかるようです。
しかし食事については、これが一番の根本といってよいでしょう。
最後にもう一つ大事なことは、我々は時に飢餓感、すなわち「ひもじさ」を経験し、またわが子にもこれを体験させることが必要です。
そのためにはひと月に1回くらい、夕食抜きの日を家族で持てば、ほぼ理想に近いと言えましょう。
もしそれが困難なら朝食抜きでもよいわけですが、このほうは実行しておられる方も少なくないでしょう。
私が常に尊敬している方のうちに、今年九十三歳になられる土井竹治先生という方がおられまして、最近「健康長寿の秘訣」という本を出されましたが、その中にも断食の効能について力説しておられます。
人間というものは、もちろん私も含めて、結構さに慣れっこになり、とかくそれを忘れがちなものです。
ですから、時には自ら進んで遮断を経験して、それからくる恩恵を改めて噛みしめるように努めることが必要なわけです。
そういう意味では「断食」という特殊な方法は、とりわけ意志堅固な方は、おやりになるのもいいことだと思います。
もっともそれは必ずしも完全遮断という形式によらなくとも、先に申しましたように、週に一回か月に数回、夕食抜きの日をぜひ実行できたらと思います。
また、あのスキーヤーで有名な三浦雄一郎氏が『敗けない男の子にする本』の中で書いていますが「子どもには汗を流させ、時には飢えさせろ!!」と力説され、「物があふれ、暖衣飽食してヌクヌクとしている現代日本で、一番のご馳走は腹ぺこになることかもしれない。そして子どもたちには、一度飢えさせてみる必要がある」「人間はこれまで体験した事のないひもじい思いを、何度か繰り返すうちに、何か精悍な生き物に変わってくる。眠っていた野生が少しずつ目覚めてくるのである」と書いてありますが、まったく同感です。
そしてぜひとも励行していただきたいことは、ひと月に一日、玄米とみそ汁、漬け物および梅干しだけの日を作っていただきたいものです。
いわゆる「粗食の日」を決めて、これを実行していただきたいのです。
これは結局「食」の原点に立ち返り、食の「原点」を見直すためです。
というのは、何度も申しますように、それほど人間というものは贅沢に慣れやすく、「食」の恩恵を忘れがちなものだからです。
そしてお互い人間は、物の豊かさに慣れますと、とかく精神力の緊張が欠けて緩みやすくなりがちだからです。
ですから親御さん方も、自ら実践なされると同時に、子どもさんたちにも粗食に耐え、時には「ひもじさ」を経験させるということは、親として真の愛情ではないでしょうか。
古来東洋には、粗衣粗食といってその質朴簡素な生活を重んずる風習があり、いまなお日本人の血の中には、そういう伝統が流れているのです。
とりわけ山間部の地方に旅しますと、そういう風習を感じる場合がすくなくありませんが、しかしそれも近頃ではテレビの影響や交通の便利によって次第に汚染されつつある現状です。
とにかくこの頃の若いお母さんは、既に戦後に生まれの方ばかりになって、そういう簡素のもつ一種の清々しさを味わう機会を失ってきましたが、その潔浄さを味わう一助として、ぜひ梅干しとかみそ汁とかという日本人としての正しい味覚を失ってもらいたくなく、それをまた子どもたちに伝えてほしいものです。
と同時に「衣服」の面においても、子どもにデザインや色のゴテゴテしたものや流行のものを着せることをもって満足せずに、こざっぱりした服装の持つ「味わい」も時に知らせてもらいたいと思うものです。
要するに衣・食という面からも、わが国土に根ざした日本人的感覚を大事にしていただきたいと思うわけです。
「家庭教育の心得21 母親のための人間学」(森信三著)13より
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粗衣粗食が良いという意見、全く同感です。
一時期、朝食は玄米とひじき、小魚のみという生活をしていましたが、すこぶる体調はよかったですね。
今は息子も産まれてしまい、玄米はやめてしまいました。
2歳半でも玄米は食べてよければ、家族の主食を玄米食にしていきたいですね。
最近よくあること。
息子にご飯を食べさせようとするのですが、息子は「イヤ、もういらない」と言います。
そんな時に無理に食べさせようとすると、泣きじゃくる。
みなさんもご経験の通りだと思います。
その時にどうするかということですが、妻はそれでもどうにかして食べさせようとする。
一方で私は食べさせないでいいと思っています。代わりに残した分は次の食事に出す。
食べ物があることが当たり前になっていて、そのありがたみが分かっていないんじゃないかと思うんです。
なので、たまには食事がないという状況をつくって、ご飯があることのありがたみというのを体感させたほうがよいのではないか。
そんな風に思っていますが、妻や母からすると、それは可哀想という話になります。
うーむ、しかし、どうなんでしょうか。
食べ物のありがたみを体感してもらうことが子どもの将来にもよいと思うのですが、、、。
妻や母の反対を押し切ってやってしまうべきなんでしょうか。
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