夫婦は1日に1度は二人だけで話す機会を
家庭教育について、その根本をたぐっていくと、結局、夫婦のあり方に帰着するように思われます。
そして夫婦の心構えの根本については以前書いた通りです。
心の態度を確立することは何より大事なことですが、その上で夫婦生活の知恵というべきものも多少必要ではないかと思われます。
この点について二、三申したいことは、
・夫たるもの、妻の顔・貌の不器用さについては、一言たりとも触れてはなりません。同様にまた、妻としても夫の稼ぎの不甲斐なさについて、絶対に触れてはならない禁句です。つまりこの二つは、夫婦にとってお互いに生涯の禁句とすべき事柄です。
・この世で妻の明るい笑顔ほど、夫を勇気づけ慰めるものはありません。従って、妻たる人は、朝には夫を笑顔で見送り、夕べにはまた笑顔をもって迎えるべきです。夫の朝の出勤、帰宅の一瞬に、その細心の心を砕くべきでしょう。
・これだけの給料を得るために、主人がどれほど毎日、下げたくない頭を下げ、言いたくないお世辞を言っているかーーーということの分かる奥さんにして、初めて聡明な母親と言えます。
そしてこれらの他に、重要なことをひとつ伝えると「夫婦というものは、一日に一度は二人きりで話す機会を持つように」ということです。
だんだん時代とともに全てが合理化し、スピード化したことは結構ですが、反面、夫婦でありながら二人きりで静かなときを持つことが案外少なく、チグハグになってすれ違いやおざなりの付き合いになりがちです。
そこでひとつの提案として、就寝前が一番適当だと思いますが、夫婦二人きりで対話の時間を、たとえ10分でもよいから持つべきではないかと思うのです。
それには、当分はお互いの努力が必要だと思います。
「コーヒーでもいれましょうか」とか、「これは今日○○さんからもらってきたものです」とか言って、お菓子のひとつとか、果物でもむいて出すということが、夫婦円満のひとつの重要な秘訣ではないかと思うのです。
そしてこれは、ご主人がどんなに遅く、しかも飲んで帰ってきても、ひとつの大事な約束事として必ず実行してもらいたいものです。
必ずとはただの一度も例外を創らないということです。
どんなに疲れて帰ってきても、またどんなにやるべき仕事を抱えていても、奥さんとのこのひとときの「黄金の時間」を大事にすべきだと思います。
これが夫たる人のとも言えるでしょう。
くつろいだ対話の時間を持つといっても、一日の安らぎにつながる話題でありたいものです。
なるべく明るい話題でありたいものですが、しかし長い年月を、年中そういうわけにはいかない日もあるでしょう。
ただ、できる限りグチ泣き言の話にならぬよう心がけたいものです。
とりわけ、舅・姑の悪口をその時に聞かせるということは、主人にとって二重の疲れとなり、堪え難い苦痛となるわけです。
ミレーの「晩鐘」にも似た、一日の安らぎと感謝と喜びの時でありたいものです。
とにかく、夫婦のあり方いかんによって、家庭の雰囲気が大きく左右され、そしてそれを鋭敏に感受するのがほかならぬ子どもたちです。
そういう意味で、夫婦のあり方こそ、こどもの「人間教育」に対しては実に基盤的な意味を持つものゆえ、夫婦は、特に妻たる人は、あらゆる知恵を結集して、夫婦のあり方を正しく、明るくするように努力するのが、真の生きた叡智と言えましょう。
例えば、食事で腕を振るうということも、その最たるひとつ。
いつも考えるのですが、現在女性が主人をはじめわが子に対する愛情の程度は、日々の食事に対して、どれだけ心を込めているか否かによって計ることができるのではないかと思うのです。
すなわち、それによってご主人はもとより子どもたちも、「今晩のごちそうはなんだろう?」と心の中で考えながら、楽しみにして我が家へ帰るようでありたいと思うのです。
そうなると、主人のほうでも、三度に一度は同僚の付き合いも、何かと口実をつくって断って我が家に帰り、奥さんの手料理の腕前を楽しむようになるでしょう。
そしてご主人が「どこの料理がうまいといっても、やはり我が家のご飯ほど口に合う料理は無い」と独り言しながら、真一文字に家に帰るようになるわけです。
奥さんの料理の腕前はこれほど絶大な威力を持っているのに、その認識の足りない人が、少なくないのではないでしょうか。
「家庭教育の心得21 母親のための人間学」(森信三著)6より
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森氏が存命の頃は、女性は家庭を守り、男性は仕事をしてお金を稼ぐ、という家庭が多かったのかもしれませんね。
現代は、男性はもちろんのこと、女性も仕事をするようになっているので、家庭のことだけに心を砕ける時間というのは、昔に比べれば間違いなく減っていると思います。
ただ、そんな状況であっても、1日に1度は二人だけで夫婦で話す時間を作るというのは賛成です。
私自身、仕事が忙しくて夜中も家で働いてしまい、妻と会話が無かったときがありました。
そのときは、夫婦というよりも、同居人、というような感じ。
すれ違っても言葉はなく、目も合わせない。
しばらくは何も感じませんでした。
しかし、そんな時に息子が原因はよくわかりませんが、とにかく泣く時機がありました。
このままだとよくないのかもしれない。
そこである日、仕事から帰ったら私から話しかけるようにしました。
もちろん息子は寝ている。妻は明日の息子の保育園の準備。
忙しくしていて、話しかけるのは悪いかな?と思いつつも話しかけてみる。
「今日は、息子、保育園でなんかあった?」
すると妻、「私だって、つれて帰ってきただけなんだからわかるわけないじゃない」
そっけない返事。もうこれで会話終了か。
と思いきや、妻が「そういえば、友達の○○君と喧嘩したみたい。最後には仲直りしたけどね。あの子、力強いからけがさせないかハラハラよ」と続けてきたんです。
それから意外と会話が成り立ちました。
どうやら妻のほうも、会話をしたくないわけではなく、そのきっかけを掴めずにいたようです。
それからも、話しかけるようにしていたら、今では妻のほうから話しかけるようになりました。
まだまだ理想の夫婦像とは言えませんが、子どものためにも夫婦関係を良好にしていきたいですね。
まさに「子はかすがい」です。
森氏は最後に食事について触れていますが、男性の立場からすると確かにそうなるかもしれないと思いました。
私の場合は結婚当初から共働きで、私の帰りが遅いので、食事は作らなくていい、と妻には言いました。
が、もし妻がそれでも食事を作ってくれていたとしたら、今よりも早く帰るようにしていたと思います。
単純ですね、男って。
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